プロジェクトを知る イクメンプロジェクトの活動紹介

イクメンプロジェクトの活動レポートをご紹介いたします。

2022.09.01 :男性の育児休業取得促進シンポジウムを開催

改正育児・介護休業法による「産後パパ育休」(出生時育児休業)等の2022年10月1日からの施行に向けて経営者、企業や労働者を支援する立場から具体的な考えや先進的な取組みを紹介する「男性の育児休業取得促進シンポジウム」を2022年9月1日(木)にオンラインで開催しました。

政府は、男性の育児休業取得率を2025年までに30%以上にするという目標を掲げ取組を推進しています。企業、労働者がどのように考え、取り組むことが有効か、シンポジウムでは、改正育児・介護休業法の解説と先進企業等の事例紹介、パネルディスカッションが実施されました。 参加者からは、「人事担当として法改正への対応を第一に考えていたが育休をきっかけに広い視野で考えることができた」「具体的なアプローチの方法がわかった」「夫に聴かせたい」などの声が聴かれました。

育児休業を取得しやすい職場環境

男性の育児休業取得促進について、多くの企業へのコンサルティング実績を持つ(株)ワーク・ライフバ ランス 代表取締役社長 小室淑恵氏は「管理職、本人、同僚それぞれの理解が必要」と訴えます。「産後 うつ病のリスクは産後2週間~1ヶ月前後がピーク。妻と子どもの命を救うため夫の育児休業が必要。また、この時期の夫の育児参加・感情の共有は、人生100年時代の夫婦のあり方に大きな影響を与える。」と本人だけでなく管理職・同僚にも説得力があるアプローチを紹介しました。また、北海道・札幌を中心に「パパ育休プロジェクト」などの活動をしており自身も育休取得経験のあるビジティア代表藤村侯仁氏が「(育休中は)育児よりも家事の戦力として求められることも多い。」と述べ、育休中の育児・家事への関わり方、事前準備の必要性についても意見が交わされました。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事徳倉康之氏は、同法人で取組を進めている「企業版両親学級」の取組を紹介。「私の世代から学校教育で男女とも家庭科が必修になるなど、働く人の意識もバージョンアップしている。『制度があっても風土がない』企業は生き残れない。」と企業が取り組む両親学級の推進を訴えました。

育児休業中の収入減について

育児休業をとらなかった理由として「収入が減る」という声も多くあります。 この点、2018年に男性育休100%取得を達成・継続中の(株)サカタ製作所代表取締役社長坂田匠氏は、「育児休業中の収入をシミュレーションしたものを総務から本人に提示して育休取得を促している。(育児休業給付や社会保険料免除により)それほどマイナスにならないことが分かる。」と自社の取組を紹介しました。徳倉氏からは「長い人生のキャリアを考えた場合、育休の取得により夫婦で長く働くことの経済的効率性も考えては。」との発言があり、藤村氏からは「育休取得は、それ(給与)よりも得がたい価値がある。」と実感のこもった意見が述べられました。

経営者・管理職の理解

男性の育児休業取得については、2021年度13.97%と低い取得率が示すように、年配の世代には理解されにくいという声もあります。坂田氏は、業務の属人化解消の取組により、残業ゼロや男性の育休取得を進めた結果、「誰も関心を持たない金属屋根の部品メーカーにどんどん優秀な人材が応募してくる。」と採用活動における優位性、コスト削減をアピールしました。管理職へのアプローチについて、小室氏は「上司の世代の働き方を否定しないことが重要。当時は長時間働く、育休は考えられないというのが正解だった。でも、今は育休をとるのが当然。時代の変化を理解してもらう。」と述べました。また、2023年4月からの育休取得率の公表については、就活サイトや雑誌での取得率ランキング企画等、来春の採用活動における大きなムーブメントになることが見込まれるため、今から取り組む必要性を強調。有価証券報告書への記載に向けた動きなども踏まえ、経営者層がコミットする重要性を訴えました。

誰が休んでも回る職場づくり

育児休業の必要性・重要性は理解できるが、それでも業務が回らないから困るという声もあります。 (株)サカタ製作所では、残業ありきの業務を見直すとともに、マニュアル化・ローテーション化により業務の属人化を解消。誰が休んでも対応できる体制を構築しています。坂田氏は「怪我や病気で急に社員が休んでも企業活動は止まらない。育休は事前に準備ができる。トップが強い決意をもってやり抜くことが必要。」と述べました。参加者からの「事務職と現場職で違うのでは?」との質問に対して、「違いはない。」と断言。「違いがあるなら(業務見直しにより)生産性を上げるチャンスと捉えて知恵を絞るべき。」と取組の自負を感じさせました。小室氏からも「日々の情報共有、業務の可視化を称賛することも重要。」と述べ、業務の属人化解消に向けた個人の意識改善の必要性を述べました。徳倉氏は「子どもがいる人だけの特権ではなく、働く人全員が働きやすい制度・環境を考えなければならない。」と、育児だけでなく様々な事情を抱えた全ての人に向けた制度の構築・運用をしていく重要性を訴えました。ファシリテーターを務めた認定NPO法人フローレンス会長駒崎弘樹氏からは、「男性が育児休業をとるのがあたりまえの職場になれば、コロナ対応にも強い、イノベーションにも勝てる組織をつくることができる。法改正がゴールではない。」と今後の取組に向けて力強いコメントが述べられました。

シンポジウム当日の様子はこちらからご覧ください

2022.09.28~2022.12.09 :男性の育児休業取得促進オンラインセミナーを開催[参加費無料]

育児・介護休業法が改正され、2022年10月からは「産後パパ育休」(出生時育児休業)が創設され、とくに子の出生直後に、男性が育児休業を取得しやすくなるとともに、時期や回数などについて、より柔軟に対応できるようになりました。この機会をとらえ、企業、管理職、労働者がそれぞれの立場からの理解を深め、具体的に取り組むためのセミナーを2022年9月28日~12月9日に開催しました。

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2022.01.17/01.28 :企業版両親学級(オンラインセミナー)を開催

「産後パパ育休」(出生時育児休業)が創設され、とくに子の出生直後に男性が育児休業を取得しやすくなるとともに、時期や回数などについて、より柔軟に対応できるようになったことを受けて、育児休業制度を上手に使って家事・育児をシェアするノウハウを学べる、出産を控えた方々のためのパートナーと一緒に参加できる企業版両親学級(オンラインセミナー)「親になる私たちが知っておきたいこと」を2023年1月17日と1月28日の2回開催しました。

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2023.03.15 :男性育休推進企業実態調査2022結果発表記者会見を実施

2023年4月から、改正育児・介護休業法により、常時雇用する労働者が1000名を超える事業主は、育児休業等取得の状況を1年に1回公表することが義務付けられることに先駆け、厚生労働省「イクメンプロジェクト」、株式会社ワーク・ライフバランス、認定NPO法人フローレンスの三者が国内の企業を対象に独自の実態考査を行い、調査協力の呼びかけに応じた141社の回答から得られた分析結果を2023年3月15日に記者会見の場で発表しました。



調査結果から明らかになったことは以下の3点でした。
①取得率は伸びているが、日数はばらつきがあり、「取るだけ育休」になっている可能性がある。
②「職場全体で働き方改革を実施している」企業の育休取得日数は、そうでない企業の約2倍だった。職場全体で業務の属人化を解消する働き方改革を実施しなければ、取得日数の伸びにはつながらないと思われる。
③当事者以外への情報提供の有無と取得日数は相関関係にある。育休取得への職場の理解や風土醸成 が取得日数増加へつながっている。

つまり、男性育休は取得率の向上だけでなく、取得日数を向上させるには「職場全体での働き方改革」と「当事者以外への情報提供」を行う必要があります。産後の妻の死因の1 位は自殺であり、その要因の「産後うつ」のピークの時期である産後2週間から2か月の時期に夫が育休を取得することが出来れば、妻と子どもの命を救うことにつながります。だからこそ男性の育休は重要です。
また、第一子出生の際に夫の育児・家事時間が長い家庭ほど、第二子以降が生まれており、実際の 家事育児参画時間が少子化改善にとっても重要です。
イクメンプロジェクトとしては男性育休の本来の目的から考えると、数日だけの育休取得 では本来の役割を果たすことが出来ないということから、取得率のその先にある「取得日数」に対しても注目しています。今回の取得率公開は、人材獲得競争において自社の優位性を示し、優秀な 人材を惹きつけるために非常に重要な鍵となることは間違いありません。 それだけでなく、株主・投資家に対して、優秀な人材の獲得と満足度向上を通じてサステナブルに 成長し続けられる企業であることを示し、積極的な人的資本投資の姿勢と成果を見せていくことが経営戦略として待ったなしであると言えるでしょう。

会見の様子はこちらからご覧ください